○「エコノミスト」(毎日新聞社)の7月9日発売号でコムスンの問題を受け「介護」の特集が組まれるとのことで、「介護の現場でなにが起きているか」をテーマに寄稿。制度の改正で利用者や家族、サービス、事業所ではどのような問題が生じているかをジャーナリスト、当事者(家族)の立場から執筆した。
先週より上記の原稿と格闘し、週明け月曜日は「東京新聞」の販売局の担当者とランチをかね、自宅ちかくで生活セミナーについての打ち合わせ。
その後、「朝日新聞」の記者の女性から取材を受ける。コムスン問題を受け、利用者が不正請求を見抜くための方法や上手な業者の選び方、契約の際の注意点などを経験をふまえて具体的に話してほしいとの依頼で、我が家の「サービス利用票」や契約書を提示し、書類の整理法なども実際にお見せするなどして3時間ちかく。
○先日夜に放送されている情報番組でコムスンの譲渡先に名乗りをあげた居酒屋チェーンの代表に女性キャスターがこう聞いた。
「介護は儲かりますか?」
この質問に代表は口ごもっていたが、その隣にいた女性ジャーナリストが、代表が出版したという本を見せながら、「この本には儲かると書いてありますよ」と笑みを浮かべてこう答えていた。
このやりとりを見て、私もなんともいえない気持ちになり、テレビを消した。
コムスン問題の一連の報道で、あらためて社会のなかで介護が「サービス」として定着したという実感し、そのことに異論を唱えるわけではない。
しかしながら、在宅で介護をしている家族は「24時間365日」、自分の時間を確保することさえままならない状況のなか「無償」で介護を行っている。在宅でも施設でも、介護の現場で働く職員は高いとはいえない賃金で働いている。
巷に「サービス」の名がつくものは数あれど、「命を預ける」介護サービスほどに「人」と「人」との深い信頼関係の上に成り立つサービスはほかにあろうか。
利用者は介護サービスを提供する介護職に、ときに裸体をさらけだして入浴や排泄の介助を受ける。そして、それはときに「命を預ける」行為につながる。また、家族は、隠したいと思う内情でも毎日のように自宅を訪問されることで「包み隠さず見られてしまう」ことも覚悟せねばならない。
とくに、制度改正後から現在において、利用者や家族、サービス提供事業所の現場をみているとさまざまな問題が生じている。
「なにが美しい国じゃ、弱い年寄りは早く死ねと言っているようなものじゃけん」
昨年秋、取材で長崎を訪れた。その際にお会いした68歳の男性の言葉が今も頭から離れない。
この男性は生活保護を受けながら長屋風のアパートで暮らしていた。週3日の訪問介護を利用しながらひとり暮らしを続けている。
取材時は、制度改正で軽度者の福祉用具レンタルに制限がかかったことで、これまで借りていたベッドを返却せざるをえない状況になって大変困っていた。彼は脊椎管狭窄症で腰から太腿にかえてしばしば痛みが走り、自力で起き上がることが難しいときもある。
ちなみに、軽度者の福祉用具レンタルに制限がかかったことについては要介護認定の項目だけで判断する現行の基準が厳しすぎると、全国のケアマネジャーや事業者、自治体などから批判の声があがり、給付制限が緩和された。
上記の男性がその後どうしているか気になって、担当のケアマネジャーに電話をいれた。すると、男性は今年6月から、以前のように介護用ベッドを以前どおりにレンタルできるようになったと聞いて安心した。
しかし、私が取材で訪れた後、一度ベッドを返却し、その後今年の6月までは毎月木製の「堅い」ベッドを自費を使ってレンタルせざるをえない状況で、利用者も事業者もかなり混乱が生じたと話していた。
「介護は儲かりますか?」
介護現場で起きていることはこの一言では括れない。