「たまゆら」火災から1カ月 事故の教訓 ~もうひとつの現場から~

福島県いわき市にある介護施設の火災現場。
2009年1月に撮影

10名の尊い命が亡くなった群馬県渋川市の「静養ホームたまゆら」の火災。事故発生から1カ月が経過した。現在も捜査が難航している。この施設の入所には年齢制限がなかったとみられ、有料老人ホームに該当せず、行政の監督権限が及ばない施設である可能性も出てきた。さらに、損傷も激しく、現場の再現実験も不可能のようだ。

昨年の2008年12月には福島県いわき市の老人介護施設「ROSE☆楽部粒来」で5名が死傷した火災事故が起きている。私は今年1月、福島の老人保健施設を取材する機会があり、この事件現場にも足をのばした。訪ねる人が多かったり、地域で知られている施設の場合はタクシーの運転手さんも迷うことはないのだが、このときは場所がわからず近辺をぐるぐるまわるハメに。現場は住宅地の奥まった一角にあり、建物を覆っていたブルーシートが痛々しかった。

福島県いわき市の老人介護施設の火災の場合、その後の調査で、火元とみられるリネン室にアロマオイルを含んだタオルがあったことが判明したようだ。オイルの付着したタオルを乾燥機で乾燥すると高熱を発し発火することがあるほか、乾燥後に発火するケースもあり、この事故の原因となった可能性もあるとみられている。

ケアをする側は「してあげる」ことに目を向けがちだ。しかし、「してあげた」後の確認やフォロー、安全性の配慮もじつはそれ以上に大切なことではないかと感じる。このことは、食事、入浴、排泄などすべてのケアに通じる。ケアする人にそのことを改めて教えた事故だった。

群馬県渋川市の「静養ホームたまゆら」の犠牲者には低所得で身寄りのない高齢者もいた。
軽視されていい命などない。
犠牲になった皆様に哀悼の意を捧げたい。