被災地 在宅介護の現場から

東北地方太平洋沖地震について、
人が人を想うあたたかな地域が被災地となったことに
大変心痛し、毎日を過ごしております。

予定していた講演が中止になり、伺うことができなかった福島。
同県いわき市には、私が講演や記事でたびたび紹介している
老人保健施設があります。

この施設ではご利用者と職員の全員が千葉県鴨川市へ集団で避難すること
ができたようです。しかし、この避難に際して、大型バスによる移動の車中、
女性2名の容態が悪化、現地到着後におふたりが亡くなられたとのこと。

宮城県仙台市には、利用者や家族の負担軽減を第一に考え、
ヘルパーにたん吸引の指導を行って医療の必要性が高い患者に
サービスを提供しているNPOの訪問介護事業者があります。

この事業者ではご利用者やヘルパーの無事は確認できていますが、
震災後、暗闇の中でアンビューバッグ(手動で人工呼吸を行う器具)を
一晩中動かし続けたヘルパーもいました。
サービス中に被災し、津波からご利用者を守るため2階に運ぶことが
できたけれど、ヘルパーの車が流されてしまったそうです。

家族が近隣にいない、独居や高齢者のみ世帯のでは、水や食料、燃料
を得るために並ぶこともできず、自宅にいながらも避難所より厳しい状況に
置かれている高齢者もいます。

こうした高齢者にとって、訪問介護のヘルパーは命綱のようなものですが
燃料不足で車が動かせなかったり、遠出できない事態が起きています。
優先的に給油できる緊急車両に指定されず、指定されても被災地の救援車両
ではないため給油を断られることがあるようです。
この事業所では「訪問介護ヘルパーたちは皆、自分たちは街のセーフティー
ネットの一つであるとの自覚を持っている。しかし、そのように見なされて
いない」と訴えています。
被災地の在宅介護サービスについて、柔軟な対応が早急に求められています。

同じく被災地となった岩手県宮古市には、福祉に熱心な市長に
お会いしに伺った思い出があります。

「こういう事態になったときに、その人の本性がわかる」
被災者の方が話していた言葉を実感しています。